経営支援事例-株式会社日野折箱店(神辺町商工会)

[将来を見据えて自走するための支援を行い、事業者自らが経営革新計画や補助金申請書を作成]

デジタル化により作業効率をアップし、従業員を増やさずに売上をアップしています

 日野折箱店は、アイスキャンディーに使われていた木製の棒の製造で1948年に創業し、その後、婚礼を中心とした引き出物や仏事の折箱などを製造。需要が低下した30年ほど前からは、折箱製造を離れ包装資材の卸売りを中心に行っていました。

 

 代表取締役の日野さんが「持続化補助金に挑戦したい」と神辺町商工会を訪れたのは平成29年のこと。担当した藤本経営指導員は「補助金目的の事業計画ではなく、5年後目指すべき日野折箱店の事業計画を作成しましょう」とアドバイスしました。その時の日野折箱店の現状は福山市内の飲食店や鮮魚店、青果店に割りばしやおしぼりなど5,000アイテムを販売する『包装資材販売部門』とおせち料理などで使う木製の折箱やお弁当屋が使うプラスチックや発泡製の折箱の製造・販売を行う『折箱製造部門』の2部門で構成されており、売上の8割以上が『包装資材部門』で、営業利益は赤字で推移していました。

 

 日野さんの希望は、『折箱製造販売部門』を強化して、2つ目の売上の柱を作ること。当時、移動販売車やテイクアウトのニーズが高まっていたこと、全国的に折箱業界は事業承継ができずに廃業が進んでいたため同業社からの製造依頼があることが背景にありました。

 

 日野さんと藤本経営指導員が話し合って絞った課題は『集客』『受注』『製造』『出荷』『自社分析能力』の5つ。多品種少ロットが生産可能なこと、木製折箱以外にPSP折箱が製造可能なことなど、自社の強みを発信できていなかった『集客』については、ホームページを作成することで周知を広げ、アナログだった『受注』は受発注システム『CO- NECT』、『製造』には生産管理システム、『出荷』にはハンディーターミナルを活用した集荷システムの導入し、デジタル化を進めました。ヒアリングを進める中で藤本経営指導員は、これらのニーズにマッチングする補助金は事業承継補助金であると判断し、日野さんには事業承継補助金を提案しました。

 

自立型の支援を行った藤本経営指導員(左)と自らの手で補助金の採択や経営革新計画の承認を達成した日野社長(右)

 申請に必要な書類は、日野さんが作成し、藤本経営指導員が作り方を助言しながら、何度も手直しして完成。その結果、平成29年度の事業承継補助金に採択されました。この時に広島県で採択を受けたのは県内で日野折箱店1社のみ。この事が日野さんにとっても大きな自信になりました。また、補助金の申請と同時進行で経営革新計画を作成し、承認を得ています。藤本経営指導員が目指すのは、これからも一人で走り続けることができる自立型の支援。藤本経営指導員は、「事業者が自走するためには、まず自分で立つことができなければいけません。そのためにまず自分で経営計画を作ることが第一歩だと考えています」と話します。その後、ニーズに合わせて福山市の課題解決補助金、小規模事業者持続化補助金などを活用しました。

 

 当時、同商工会青年部の部長を務めていた日野さんは、青年部を卒業する際にも部員たちに経営革新計画を自分で作ることの大切さを熱弁。日野さんの事業の実績を見て経営革新計画の重要性を感じた部員に作り方を支援した結果、R5年度は3名が承認を得ました。

 

 日野折箱店は支援後、売上が1.8倍に増加。折箱部門の売上は6.8倍となり包装資材販売部門を超えて、日野さんの希望通り事業のもう一つの柱となりました。日野さんは、機械を使いやすいように独自に改造するアイデアマン。この知識と経験を活かし、折箱専門のコンサルとしてもスタートを切りました。日野さんにしかできない技術により第3本目の柱が誕生しようとしています。また、藤本経営指導員の今回の支援事例はR512月の経営支援事例発表全国大会で最優秀賞となり日本一に輝きました。

 

○日野折箱店

TEL/084-922-3837

住所/福山市明神町1-3-7