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わがまちの元気印-松川繊維

ツナギ服の製造業者が2つの自社ブランドを軌道に乗せて“脱下請け”を目指す

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福山北 商工会

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わがまちの元気印-松川繊維

▲それぞれのブランドを立ち上げて新規顧客の開拓に挑む尾崎一成社長と妻ひとみさん。

 

地域の伝統産業である繊維産業が先細りしていく中、ニッチな分野に特化したモノづくりに活路を見出し、生き残りを賭けた新規事業に果敢に挑む企業が福山市駅家町にあります。1975年(昭和50年)の創業以来、ツナギ服の製造販売を手掛けてきた“松川繊維株式会社”。新たな市場に目を向け、近年、これまで培った独自の技術力をベースとする自社ブランドを積極的に展開。新規顧客の開拓を強力に推し進めて、厳しい時代に生き残りを図ろうとしています。

 

同社の代表を務める尾崎一成社長は、もともと繊維業界とは無縁の人物。妻ひとみさんの実家の家業を継ぐために脱サラし、大阪から福山へ移り住んだのが30歳の時。「努力次第で大きく稼ぐことも可能な事業経営に興味があった。事業内容もおよそつかめていた」。創業者である先代の後を受け、1998年(平成10年)に2代目代表に就任しました。

 

同社はパターン制作から裁断、縫製まで一貫して行い、自動車・農機具・重機販売店などの作業現場を支えるツナギ服を製造し販売。エンドユーザーは多業種で、その中には数多くの大手企業も含まれるなど、創業以降、同社の業績は比較的安定した推移を保っていました。しかし近年、人件費の安い海外に生産拠点を移す縫製業者が増え、新興国メーカーの台頭や過剰供給などにより、業界の空洞化が加速。同社の業績も徐々に下降線を辿り始め、同業者の倒産も相次ぎました。取引先の倒産によって、大量の生地を在庫として抱え込む事態にも見舞われました。「だが、逆にそれが新しいチャンスの芽になるとは、その時は思ってもいなかった」と当時を振り返る尾崎社長。

 

今から6年前のこと。「10月に鈴鹿で開催されるF1日本GPのスタッフスーツを制作してほしい」。大阪の取引先企業から突然舞い込んだ依頼が、一つの転機になりました。創業以来ツナギ服の製造に特化し、地道なモノづくりを続けていた同社にとってまたとないチャンスで、「身震いするような戸惑いがあった」。尾崎社長はこれまでの経験と技術を信じ、不安を自信に変えてこの大仕事に挑戦。見事にそれを成功させました。すると、ドライビングスーツの依頼が立て続けに入るなど、今まで取引のなかった分野に新たな活路が開けてきました。

 

「今がチャンスか?」。ツナギ服の製造からレーシングスーツ、ドライビングスーツの製造に軸足を移すという、思い切った方向転換を尾崎社長は図ります。既存の技術を生かしてオリジナルの“レーシングツナギ”を作り、販売を開始することにしたのです。F1日本GPのスタッフスーツを手掛けたことが一つのきっかけですが、大量に抱えた在庫の生地を生かしてひとみさんがオリジナルのエプロンを制作し、自社ブランドを立ち上げて売り出したことに触発されたのが大きな要因でした。

 

難燃素材を生地に使用することで、安全性や耐火性を高めているのが従来のレーシングスーツ。尾崎社長は難燃素材を使用しない、これまでになかったレーシングスーツの開発を試みました。「レーシングスーツ=プロが使用する高価なウェアが定番イメージ。それを覆したかった」。一部の限られた人のためのものではなく、誰でも気軽に着ることができるレーシングツナギを開発し、2006年(平成18年)2月から“ソニエルジャパン”というブランド名で売り出しました。

 

難燃素材を使わないことにより、コストを従来の1/10程度まで抑え、どこにもない低価格を実現。同時に、大幅な重量低減ができたことで、身体への負荷を軽減することにも成功したレーシングツナギは瞬く間にヒット。製造に用いる加工技術は同じで、難燃素材があるかないかだけの違い。単純かつ大胆な発想の転換によって、尾崎社長は愛好家たちにレーシングツナギという新しい選択肢を示したのです。「レーシングスーツの価格はそれこそ青天井だが、レーシングツナギは安いものなら5,000円から」と尾崎社長。

 

誰も着目しないニッチなニーズを狙い撃ちしたことが奏功し、開発以降、売り上げはコンスタントな右肩上がり。「周囲を見渡しても競合相手はどこにもいない」。現在、月平均50着のオーダーがあるといいます。

 

ソニエルジャパンより一足先に、ひとみさんが立ち上げたもう一つの自社ブランド“ブルームーン”は、備後絣、帆布、デニムなどの備後伝統の生地を使用して、オリジナルのエプロンなどを製造し販売。生地の質感を生かしたソムリエエプロン、ギャルソンエプロンなどのワンランク上を目指す人向けのエプロンをはじめ、カフェ雑貨、帆布バッグなどを手掛けています。刺繍加工やプリント加工にもこだわりを持ち、同業他社と連携しながら常に高品質、高付加価値を追求しています。

 

自社ブランドを車の両輪に例え、「当社が生き残るためには、どちらが欠けても前には進めない」と尾崎社長。同社の事業割合は、ツナギ服の製造事業6に対して、自社ブランド事業4の割合。自社ブランド事業の割合を今後大幅に増やすことで、不況下でも常に新規顧客の開拓を行い続け、自社の経営基盤を強固にしていきたいと意気込みます。近い将来“脱下請け”を実現し、地域の同業者らと手を携えて伝統産業の振興による地域経済の活性化に貢献すること。それが尾崎社長の描く大きな夢です。

 

●お問い合わせ/松川繊維株式会社 TEL(084)976-1592
●お問い合わせ/福山北商工会 TEL(084)976-3111

 

“ソニエルジャパン”のホームページはこちら

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